めびうすをちょっとだけ読んでみる。

『ＭＯＢＩＵＳ　―輝きの使者～闇を継ぐ者～―』

　目の前に奇妙な建物が現れた。
　来ちゃったのか……。
　そこはお父さんが死んだ……殺された場所。
　そこはお父さんが設計した最後の建物。

〝ムーンライト・タワー〟

　そう命名したのは、出資者である光月圭一郎だった。その彼もお父さんと同じ日に殺された。
　……というと、ちょっと語弊があるかも。その犯人が本当に殺したかったのはその光月圭一郎で、お父さんはそれに巻き込まれただけ。
　犯人が逃げる時に殺した。いわば、お父さんはなんの罪もなく殺された、完全なる被害者なのだ。
　まあ、そんなものもどうでもいいわけで……。
　過程なんて関係なくって、要は結果なわけで……。
　それにしても……。
　その建物を見上げる。
　変な形だよね……。
　地面から生えたコンクリートキノコっていうか……。大きなＴ字の建物。
　なにに使うんだろう？
　っていうのもなんだかね。この前もイベントがあったし。
　なんだか、日蝕があるとかで、みんなで観よう！　みたいなイベントをしていた。
　太陽が欠けたその日、家族も欠けた……。
　あ～あ。なんだかんだで結局お父さんの事ばっかりになっちゃう。
　同じ事ばかり。
　なんだかんだで抜け出せないのかな……。結局は家族なのかな……。血の絆ってヤツ？　なんだか馬鹿らしい。青いね……あたしも。
　特になにをするでもなく、ブラブラとしていた。
「ねぇ」
　そんなあたしに声を掛けてきた人がいた。歳は同じくらいだろう。とすれば、学校は？　今日は平日で、あたしはサボり。学校公認の。
「…………？」
　あたしはよくわからず振り返る。
「ここ、変な建物ね」
　いや、あんたもたいがい変だと思うんだけど……。
「でも、魅力的ね……なにかが起こりそう。そう……なにか輝く事が」
　そう言うと、その人は去っていった。
　なんだったんだろう？
　その言葉が現実になるとは思ってもいなかった。

　　★――――★――――★

　オレはどうすればいいんだ？
　後悔してる。
　ちょっとした事だったのに、どうしてこうなっちゃうんだ？
　勾野朱音。
　オレの親友。
　オレが殺してしまった。
　後悔してもしきれない……。
　この場所……変なＴ字をした建物。
　あの日……朱音は死んだ。
　なあ、どうすればいい？
　誰も答えてはくれない。
　きっと、答えなんてないんだろう。
　過去は変わらない。
　オレは朱音を殺した。
「ねぇ」
　誰かが声を掛けてきた。オレと同じくらいの歳の女の子だ。
「…………」
　声を掛けてきたくせになにも喋らない。
「なんだよ」
「……なんでもないわ。ただ、魔の時間に輝きを増すのよね、この場所は……その時、ボクはいないんだろうけど」
　その女の子はそう呟いた。
　っていうか、自分の事をボクだなんて……珍しいヤツ。
　まあ、オレも自分の事、オレって言ってるけど。
「な、なんのこ……」
〝とだ〟という言葉は出なかった。それよりも先に、姿が消えていた。
　なんだったんだ？
　結局、なにもかもがわからないまま、ただただ進行していた。

　　★――――★――――★

　人生滅茶苦茶。
　パパのせいで全て台無し。
　もう学校にも行けない……。
　行けば虐められる。

〝人殺し〟

　――って。
　わたしが殺したわけじゃない。
　殺したのはパパだ。パパがあの光月って人を殺した。
　逃げる際にタワー関係の人を一人殺して、そこにいた自分と同い年の女の子を殺した。そして、自分は車に轢かれてあの世行き。
　その罪を背負ったのは残されたわたしたち家族。
　なにもしていないのに殺人者扱い。
　もう、どうにもならないんだろうな……。
　だから、この場所が嫌い。
　ここでパパが人を殺した。
　つまり、ここでわたしの人生は終わった……。
　どうしようもないのかな……。
「ねぇ」
　誰かに声を掛けられた。
「誰ですか？」
　そこにいたのは、わたしと同じくらいの年齢の女の子だった。
「全ての因果はこの場所に集う。そして、セカイは輝き始める」
「え？」
　女の子はスッと塔を指した。
「…………？」
　思わず塔を見た……その次の瞬間、彼女の姿はなかった。
　幽霊？
　もう、世界はどうでもよくなっていた。

　　★――――★――――★

　そして、運命に導かれるように、三年の時を経て彼女たちは集う。

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